読書とか日記

読んだ/見たときの感想と日常です。

チ。ネタバレあり

『チ。─地球の運動について─』全8巻読了。面白かった。

荒削りさも感じたがそれが物語の勢いに変換されていた。コマ割りのセンスが非常に良かった。

 

魅力的なキャラクターたちがバンバン死ぬ。びっくりするほどのスピード感で、しかし退場を惜しまれるくらいしっかり読者を惹き付けたうえで死ぬ。以前4巻あたりまで読んでいてあの三人が好きだったので、5巻は、ああそうか〜…とやるせなくなりました。

でも「そういう話なんだ」というのは1巻で強く示され刷り込まれていたので裏切られたような気持ちにはならない。

 

8巻の家庭教師が1巻の初代主人公の成長ifキャラでちょっと混乱した。ここから世界線が違うのかな?でもあの場面の新人神父は年老いて出てきたし。手紙が届いてるからあのとき飛ばされた伝書鳩も存在するんだな、やっぱ同じ世界か。ってなりました。似てるけど別の存在なら、わかりやすくそう描いてほしかった。

 

でも同一人物みたいに描きたかった理由は作者にはあるはず。

1巻からの話の進め方で「知を求める好奇心=絶対的な善」ともとれる描き方になっていたから、そこのバランスを修正したかったのかもしれない。知を求めるとき人間は善にもなるけどほら、こんな風に身勝手にもなり得るんだよみたいな。だからここは似ている別人よりも同じ人間の別の側面として描きたい、そんな意図かもしれないと思いました。

たぶん作者が描きたいのは知を求める「純粋な情熱」の方で、「知を求める」の部分を無批判に称賛するのは本意ではないのだろう。

まあやっぱりわかりにくいけど…。意図があったとしてそのためにリアリティラインをいきなり変更されてメタな構造になる※のは混乱するじゃん!って思う。でもそれが作品を致命的に壊してるわけでもないので…自分にはよくわかんなかったけど作者はこう描きたかったのだなと受けとめます。

 

たしか若い方の初連載だという情報を見かけた記憶があり。作品のテーマと作者の初期衝動が響き合うような、良い漫画でした!

アニメ化も発表されているそうで楽しみです。

 

※死んだ人物の別バージョンが唐突に出てきたことによって「彼らは架空の存在なので」って突きつけられた形になるので、それをメタだと感じました。