読書とか日記

読んだ/見たときの感想と日常です。

パチンコ 下巻(長文)

パチンコ読了

 

面白かった、

母が読んだらもっと楽しむだろう。

でも活字で長いもの読むの目がもう辛そうだから

ドラマ版を見せてあげたい。

アップルTVはテレビ画面で見れるのかなと調べたら

なんか対応してる機器じゃないとだめなのかな。

DVDは海賊版らしいのしか存在しないな。

 

 

 

※以下ネタバレのある感想

 

ストーリーへの批判ではなく

素直に没入したうえでの感想として

ノアが自殺した下りで

バカじゃねえの!と思ってしまった。

自分自身も在日韓国人なので

彼の境遇がとくに気の毒だとは思わないからです。

 

いじめられて自殺する人のことは責められないが

仕事があって家族がいて希望して帰化もして

自分の生まれたいきさつが気に入らないと

自殺するのは、

彼がマイノリティだとしても共感しがたい。

嫌いなキャラクターではないけど。

ノアの妻は父親も自殺してるので余計酷いと思う。

 

作者の意図した受け取り方ではないと思うけど

ノアはどういう生まれだとしても

理想と違う自分を受け入れられなくて

生きづらかったのかもしれないなと思わないと

納得できない。

 

まあ、読者個人の来歴によって感じ方に幅が

あるのは当然なんだろう。

 

これはたまたま自分と同じ属性のマイノリティー

物語だからそう感じたわけで

違う集団の誰かの話だったら

共感しがたいとは感じながらもう少し

そういうものかなあ…と思ったかもしれない。

 

逆に作者にとって

同じ民族で違う境遇の人たちの苦難

というのは

取材など必要な苦労は多かったとしても

自分と全く同じ経歴の人々を描くより

ある意味取り組みやすかっただろうと思う。

 

アメリカから来たガールフレンドの

アメリカの友人たちがわかってくれない」

ことへの諦めのほうが

ごく短いながら生々しさを持っていて面白かった。

実際日本に住んでいたことがあるそうなので

そのとき感じた作者の生の気持ちが反映されて

いるのかもしれない。

 

移民たちの苦難と獲得と喪失の物語であり

なおかつ自分たちの社会の話ではないので

その差別や社会問題に責任を感じることなく

ドラマを味わうことができるというのが

この作品が合衆国で人口に膾炙した要因の一つだと思う。

 

この物語の在日の人々は

怒りを滾らせてはいない。

(だから日本人でもわりと読みやすいと思う)

(美しくやさしく優れた日本についての物語を

読みたい人にはもちろんおすすめではない)

 

ソンジャはその時代の在日一世の女性としては実は運がいい。

父親に大事にされて(男の子じゃないからと冷遇されなくて)育って、愛した男は既婚者だったけど

捨てられたのではなく彼女をまだ愛していて

彼女の方から別れて

窮地を救ってくれた夫も彼女を妻として愛して

ソンジャも夫のことを尊敬し愛した。

 

勤勉に対してはちゃんと報われていて

小姑は優しく

目立たないようにしながら

近所の大部分の人より清潔な暮らしをして。

 

息子が死んでしまったこと以外は

本当に辛いことではなく

尊厳を本当に踏みにじられる場面も

少なくとも小説の中では描写されない。

 

ドラマ性はありつつ主人公や読者に実は優しめの

そんなバランスがちょうど良かったのかなと思う。

 

本編とは別の感想として

巻末の解説の洋書レビュアーの方が

最初食わず嫌いした理由で

「日本で育った私が得る新鮮さはないだろう」

って書いてて、それは建前じゃんと思って

そこに建前を持ってくることが

ちょっと生々しくてそれも興味深かった。

在日韓国人年代記に造詣の深い日本人とか

正直あんまりいないので

「新鮮さはない」と予想するのは妙で、

それよりも米国で結婚して

おそらく永続的に住んでいる身で、

米国で英語で出版されて話題になりつつある小説の中で、

もしかしたら日本人が悪辣な存在として

書かれているかもしれないと警戒して

もしそうだったら辛いから読まないでおきたい

というのが本音だったのではないか。

それは私にも想像できるしマイノリティとして共感するけど、

でもはっきりそうは書かないんだな…

書きにくいことなのだろうか、と思った。

最終的にアメリカと日本のミックスである娘に

すすめられたから読んだ、というのと

「けれども、これは日本人を糾弾する小説ではない」

という一文に、私の想像もそう的外れではないだろうと

感じたがどうなんだろう。